バイヤーの目利き
庄内柿の渋抜きの方法・やり方|焼酎とガスで産地が実演【動画】日数と失敗しないコツ|浜中屋
この記事を書いた人
(株)浜中屋 バイヤー 余語 敏和(よご としかず)
バイヤー歴25年
山形県鶴岡市で贈答ひと筋70余年の果物百貨店「浜中屋」の仕入れを担当。
庄内柿(しょうないがき)は、山形県庄内地方の秋を代表する種なし柿です。じつはこの柿、もともとはそのままでは食べられない「渋柿」。甘柿のように木の上で自然に渋が抜けることがないため、収穫したあとに「渋抜き」をして、はじめてあの甘さになります。
この記事では、浜中屋が庄内柿の生産者さんの作業場で撮影した渋抜きの動画2本をもとに、産地で実際に行っている渋抜きの方法と、ご家庭でできるやり方・日数・失敗しないコツをまとめました。
この記事のまとめ
- 渋抜きに使うのはアルコール度数35%以上の焼酎(ホワイトリカー)。ビールなど度数の低いお酒では抜けない
- 焼酎は柿に直接かけない。かかった部分が黒く「アルコール焼け」する
- 日数は焼酎で1週間〜10日、炭酸ガスで3〜4日。寒くなると抜けにくい
- お店で売っている庄内柿は渋抜き済み。届いたらそのまま食べられます
庄内柿は渋柿。だから「渋抜き」が必要
庄内柿の品種は「平核無(ひらたねなし)」と、その枝変わりの「刀根早生(とねわせ)」。どちらも種がなく、四角く平たい形が特徴ですが、分類上は渋柿です。
柿の渋さの正体は、果肉に含まれる水に溶けるタイプのタンニンです。これが舌の上で溶け出すと、口の中がしびれるような渋みを感じます。渋抜きは、このタンニンを水に溶けない形に変えて、舌で感じなくする作業。庄内では昔から、この作業を「さわす」と呼んでいます。
庄内柿のはじまりは明治18年、鶴岡で種のない柿の木が見つかったことだとされています(諸説あり)。その苗を譲り受けた酒井調良(さかい ちょうりょう)が、渋抜きの方法や販路の問題を解決して広めたことから「庄内柿の父」と呼ばれています。庄内柿は、渋抜きの技術とともに育ってきた柿なのです。
産地の渋抜き① 焼酎(アルコール)で渋を抜く
まずは焼酎を使う方法です。この動画は20万回以上再生されている、浜中屋のチャンネルでいちばん見られている渋抜きの動画です。
使うのは「35%以上」の焼酎
産地で使っているのは、35%のホワイトリカー(焼酎)です。動画の中でも生産者さんが話している通り、ビールのような5%前後のお酒では、まったく渋は抜けません。35%以上のアルコールでないとだめです。日本酒やワインも度数が足りないので向きません。
焼酎は柿に直接かけない(アルコール焼けに注意)
いちばん大事なポイントがここです。焼酎を柿に直接かけると、かかったところがアルコールで焼けて真っ黒になってしまいます。そこで産地では、柿の上に紙おむつのような吸収シートを敷き、そのシートの上から焼酎をかけて吸い込ませます。こうすると焼酎が柿に直接触れず、袋の中にアルコールの成分だけが広がって渋が抜けます。
ご家庭でのやり方(産地の方法を家庭向けに)
- 傷や割れのない、硬い柿を選ぶ。汚れは拭き取り、洗った場合は水気をしっかり拭きます。
- 厚手のポリ袋(薄ければ二重)に柿を並べる。段ボール箱やコンテナに袋をかぶせて使うと並べやすくなります。
- 柿の上に吸収シートを敷く。ご家庭ではキッチンペーパーを数枚重ねたものなどで代用できます。
- シートの上に35%の焼酎をかけて吸い込ませる。柿に垂れないよう、シートが受け止められる量にします。
- 袋の空気を抜いて、口をしっかり縛る。すき間があるとアルコールが逃げて渋が抜けません。
- 直射日光の当たらない、なるべく暖かい室内に置いて1週間〜10日待つ。
- 日数が来たら1個だけ試す。渋が残っていれば、すぐに袋を閉じ直してさらに2〜3日待ちます。
何日で渋が抜ける?
焼酎の場合は1週間から10日。後で紹介する炭酸ガスの倍くらい時間がかかります。しかも温度の影響が大きく、寒くなってくると、やはり抜けにくくなります。同じやり方でも「抜けるときと抜けないときがある」のは、たいてい温度のせいです。11月に入って冷え込んできたら、暖かい部屋に置き、少し長めに待ちましょう。
昔ながらの「ヘタにつける」方法
庄内では昔から、柿のヘタを度数の高いアルコールにつけて、袋に積んで入れておく方法も行われてきました。ホームセンターでは、柿の渋抜き用に瓶入りのアルコール(度数45%前後)も売られています。ヘタだけをさっとつけ、ヘタを下にして袋に並べ、しっかり縛ります。理屈は同じで、アルコールで渋が抜けます。
柿をきれいに仕上げたいなら「固形アルコール」
ホームセンターの柿コーナーには、ロウソクのような形の固形アルコール(柿の渋抜き剤)も売られています。開封して、新聞紙か段ボールを敷いた上に置き、柿と一緒に袋やコンテナに密閉します。こちらも10日くらいかかります。
液体の焼酎は、どうしても柿に触れてしまい皮のツヤが落ちることがありますが、固形アルコールは液体ではないので、開封したあとも柿がきれいなままです。人に分ける柿や、見た目を大事にしたいときはこちらが向いています。使用量は製品の説明に従ってください。
産地の渋抜き② 炭酸ガスで渋を抜く
いま産地で主流になっているのが、炭酸ガスを使う方法です。生産者さんの作業場で、実際にガスを入れているところを撮影しました。
産地でのガス抜きの流れ
- 収穫した柿をコンテナに入れ、5〜6段(多いときは10コンテナほど)積んで大きな袋で覆う
- 炭酸ガスのボンベから、ホースで袋の中にガスを送る
- 濃度計を挿してガスの濃度を確認。100%になったら充填完了(90%を超えてからが少し時間がかかります)
- そのまま3〜4日置くと渋が抜ける
- 渋が抜けた柿を5kg・10kgの箱に詰めて出荷
焼酎より早く、たくさんの柿を一度に、むらなく渋抜きできるのが炭酸ガスの強みです。
ご家庭ではドライアイスで
ボンベのないご家庭では、ドライアイスで同じ炭酸ガスの渋抜きができます。ドライアイスは溶けると炭酸ガスになるからです。
- 量の目安は柿10kgに対してドライアイス100〜130g(柿の重さの1〜1.3%)
- ドライアイスは新聞紙で包み、柿に直接触れないようにして厚手のポリ袋に一緒に入れて閉じる
- 約4日で渋が抜けます
入れすぎると果肉が黒くなることがあります。ドライアイスは素手で触らないこと、ふたの固い瓶や密閉容器には入れないこと(ガスで膨らんで危険です)、狭い部屋や車内で扱わないことに注意してください。
渋抜きの方法 比較表
| 方法 | 日数の目安 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 焼酎(吸収シート) | 1週間〜10日 | まず試したい方。いちばん手軽 | 柿に直接かけない。寒いと抜けにくい |
| ヘタにつける | 1週間〜10日 | 少しの量だけ渋抜きしたい方 | 度数の高いアルコールを使う |
| 固形アルコール | 約10日 | 見た目もきれいに仕上げたい方 | 使用量は製品の説明に従う |
| ドライアイス(炭酸ガス) | 約4日 | 早く、たくさん渋抜きしたい方 | 入れすぎ・取り扱いに注意 |
このほか、りんごと一緒に袋に入れる方法や、38〜40℃のお湯につける「湯抜き」、電子レンジで温める方法なども知られていますが、仕上がりにむらが出やすかったり、柿が傷みやすかったりします。確実さを求めるなら、アルコールか炭酸ガスがおすすめです。
【浜中屋 バイヤー評価】目利きワンポイント
同じ庄内柿でも、渋の抜き方で味わいが変わります。焼酎で抜いた柿は甘みにコクが出て、とろりとした食感になりやすい反面、やわらかくなるのも早め。炭酸ガスで抜いた柿は早くむらなく仕上がり、日持ちも良いのが特徴です。浜中屋では、昔ながらの焼酎脱渋の柿や、木になったまま渋を抜く「樹上脱渋」の柿も扱っています。食べ比べると違いがよくわかりますよ。
渋抜きの失敗の原因と対処法
| こんなとき | 主な原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 渋が抜けていない | 日数不足/寒い場所に置いた/袋にすき間/度数の低いお酒を使った | 35%以上の焼酎で、袋を閉じ直して暖かい場所でさらに2〜3日 |
| 皮が黒く焼けた | 焼酎が柿に直接かかった(アルコール焼け) | 吸収シートの上にかける。見た目重視なら固形アルコール |
| 皮のツヤがなくなった | 液体のアルコールが柿に触れた | 固形アルコールか炭酸ガス(ドライアイス)を使う |
| ぶよぶよにやわらかい | 置きすぎ/熟した柿を使った | 硬い柿を使い、抜けたら早めに袋から出す。やわらかくなった柿は冷凍してシャーベットに |
| カビが生えた | 傷のある柿が混ざった/水気が残っていた | 傷のある柿は除き、水気を拭いてから袋へ |
要注意!加熱すると渋が戻ることがある
意外と知られていないのが「渋戻り」です。渋を抜いた柿でも、ジャムや焼き菓子などに加熱すると、渋みが戻ってしまうことがあります。岐阜県の研究では、アルコールで渋を抜いた刀根早生をペーストにして加熱したところ、渋の成分が渋抜き前よりも多く検出されたという結果も報告されています。庄内柿を料理やお菓子に使うときは、少量で試してからにするのがおすすめです。
渋が抜けたら早めに食べるのがおいしい
渋が抜けた柿は、袋から出して早めに食べましょう。
- 硬めが好きな方:ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ
- とろりとした食感が好きな方:常温で数日置いてから
- 常温保存の目安:2〜3日。ヘタを下にして涼しい場所に
- やわらかくなりすぎたら:冷凍してシャーベットに
冷蔵庫に長く入れておくと甘みを感じにくくなります。食べる1〜2時間前に冷やすくらいがおいしくいただけます。
よくある質問
Q. 庄内柿は渋柿ですか?
A. はい、渋柿です。ただし、お店や通販で売られている庄内柿は出荷前に渋抜きが済んでいるので、届いたらそのまま食べられます。ご自宅で渋抜きが必要なのは、木からとったばかりの柿や、渋抜きしていない柿をもらった場合です。
Q. 柿の渋抜きにはどのくらい時間がかかりますか?
A. 焼酎や固形アルコールなら1週間〜10日、炭酸ガス(ドライアイス)なら3〜4日が目安です。気温が低いと長くかかります。
Q. ビールや日本酒でも渋は抜けますか?
A. 抜けません。渋抜きには35%以上のアルコールが必要です。ホワイトリカーなどの焼酎か、柿の渋抜き用のアルコールを使ってください。
Q. 甘柿にも渋抜きは必要ですか?
A. 富有柿や次郎柿などの甘柿は、木の上で自然に渋が抜けるので、渋抜きは必要ありません。
【浜中屋 バイヤー評価】目利きワンポイント
庄内柿を贈るときは、「届いてから2〜3日がいちばんの食べ頃です」とひと言添えてあげると喜ばれます。渋抜きした柿は日に日にやわらかくなるので、硬めが好きな方には早めに、とろとろが好きな方には少し置いてから。相手の好みに合わせて食べ頃を伝えるのが、柿を贈るときの心づかいです。
浜中屋の庄内柿(渋抜き済み)
浜中屋の庄内柿は、すべて渋抜きを済ませてからお届けします。届いたその日からおいしく召し上がれます。
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- 2026.11.01
- 13:47
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